COLUMN

2024.06.13

スポーツ通訳になるために必要な資格は?

  • #通訳翻訳コラム
スポーツ通訳になるために必要な資格は?

みなさん、こんにちは。プロ野球読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。

前回と前々回のコラムでは、双方の文化や選手の性格を熟知している重要性など、スポーツ通訳者に求められる要素について書きました。それでは、そもそも通訳者になるために必要な資格はあるの?必要な語学力はどれくらい?こういった疑問を抱かれたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。私の場合は27歳という年齢でゼロからスペイン語を勉強し始めましたが、やはり目標となる目安があった方が勉強もしやすいですよね。この回ではスポーツ通訳者に求められる資格・語学力について書きたいと思います。
 
 
■明確な基準はない

実は、現状私の知る限りでは通訳の募集に当たって明確な基準を設けている球団はなさそうです。「野球経験があれば尚可」といった記載は見かけますが、語学に関する資格などが明示されることは基本ありません。応募者は通訳をするに十分な語学力を有するとの前提で選考が進められるという面もあるでしょう。以前のコラムでも書きましたが、通訳者は球団スタッフの紹介で採用されるケースが多く、この場合はすでに語学にお墨付きのある人材がほとんどですので、基準はすでにクリアしていると判断されます。公募による採用となると、現役通訳者などとの面接で語学力をチェックされることになりますが、面接者の判断に委ねられるのが一般的です。
 
 
■TOEICだと785点以上が目安

これから習得を目指す方にとっては基準がないので目標設定が難しいですよね。そこで、私自身が現場で通訳をしている肌感覚で私見を述べるとすれば、中上級レベルは必須最低限のラインではないかと感じます。ちょうど、私が通訳になった当時は国際スタンダードのスペイン検定DELEの中上級に当たるB2レベルを取得していました。A1-A2-B1-B2-C1-C2と6段階あり、上から3番目に当たるB2は英語検定TOEICだと785-944点に該当し(CEFR: ヨーロッパ言語共通枠参照)、具体的に次のように定義されています。

“複雑な内容や抽象的なテーマ、スペイン語の多様性を認識し、既知の専門的内容を理解することができる。流暢かつ自然で、聞き手に困難を与えない会話能力を持ち、明瞭かつ詳細な文章を作成し、推論的分析、ディベートなどができるレベル。”

少し難しく表記されていますが、要は相手と同じスピード感で会話ができて、わからないテーマや単語があっても質問をしたりしながら会話を継続できるレベル、と言い換えることができるでしょう。
 
 
■スポーツバイリンガル検定/スポーツマネジメント通訳

これまでのところ通訳に関する資格は、主に観光業がメインとなる通訳案内士しかありませんでした。しかし、今年の3月にスポーツバイリンガル検定とスポーツマネジメント通訳というまさしくスポーツ通訳を目指す方々を対象とした検定がスタートしました。今現在、スポーツは野球、言語は英語のみですが、今後スポーツと言語の両方で徐々に対象が拡大されていく見込みです。実は加藤も、検定を実施するスポーツマネジメント通訳協会の公認応援団をさせていただいています。幅広い語学知識はもちろん、これまでのコラムでも書いてきましたように、スポーツ通訳者は異文化の間に立ち、外国人選手の私生活を含めたサポートとともに、スポーツの現場においては外国人選手と日本人が同じ方向に向かって進んで行けるよう調整していく語学力、対人スキルが求められます。語学力に加えてそれぞれのスポーツの現場に則したマネジメント能力を証明することができる、まさにスポーツ通訳者になるための検定です。プロ野球界をはじめ、様々なスポーツ業界でこれから重要視されていくであろうと思われますので、興味のある方は以下にリンクを貼っておきますので、チェックしてみてください。

スポーツマネジメント通訳協会
https://www.spomane-inter.com/
 
 
今回のコラムでは、スポーツ通訳者になるために必要な語学力と資格について紹介しました。今のところプロ野球球団においては、通訳者に必須条件などが明記されることはあまりありませんが、語学力やマネジメント力が証明できれば採用の可能性もグッと高まると思います。今日の話もスポーツ通訳になりたいと考えられている方の一助になれば幸いです。

それではまたお会いしましょう。

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