みなさん、こんにちは。プロ野球読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。
前回コラムでは、休日がないことも選手のためを思えばやりがいになる、というお話をさせていただきましたが、ちょうど先日、キャンプの休養日に数名の外国人選手が外食を希望したので連れて行ってあげたことがありました。その翌日選手たちが試合に出場したのですが、みんな結果を出しチームも勝利。外出して気分転換できたことが少しはパフォーマンスに貢献できたかなと思うと、通訳個人として休日がなかったことも報われる思いでした。
ただ、このような対応もキャンプ中で同じホテルに滞在という条件があったからできたことでもあります。キャンプ後は外国人選手はチームが用意した住居に住むことになり、通訳も自宅からの通勤の日々が始まります。そうするとキャンプと同じく、いつも休日に要望に対応できるか、というと難しいのが現実。通訳の方の中には、そもそも球場にいるとき以外は関与しないといったビジネスライクな関係を好む方もいれば、反対に自らの休みやプライベートを犠牲にしてでも選手を優先すべきという考えの方もいて、そのスタンスは様々です。
私の考えの基本は「できるときは対応してあげる、できないときはできないとはっきり伝える」です。なんだか当たり前のように聞こえますよね。しかし、選手に何かお願いされた時に、それが「できないこと」や「やりたくないこと」だとすぐに断るのが意外に抵抗があったり、難しかったりするものなんです。
もう少し詳しく言うと、「断っても嫌な顔をされない」関係になることが難しい。例えば学校や会社の先輩後輩の関係を想像してみてください。先輩や上司から何か頼み事をされたり、飲み会に誘われたりしたら断るのはなかなか勇気が入りますよね。役職の偉い人とその部下となる人もその関係が当てはまるかもしれません。つまり、両者の間に上下関係が生まれてしまうと、位の低い人は何でも屋さんになりがちで、やがてその積み重ねでストレスが溜まってしまうことも。私たち通訳も、メジャーリーグの実績ある外国人選手を担当すると、無意識に気を使うことが増えて気づいたら上下関係ができてしまい、度を越して何でもかんでも頼まれてしまう都合の良い「便利屋さん」になっていたなんてことがあります。
私の考えはあくまで選手とは対等。できるときはできる限りのサポートをしますが、例えば自分の休日の予定が既にあり対応できないときははっきりと断り、選手も理解してくれる、こういう関係が理想です。お互いに気を使わない間柄とも言えるでしょう。次回コラムでは、そのような関係を選手と築くために私が気をつけていることについて、もう少し詳しく紹介したいと思います。
それではまたお会いしましょう。