みなさんこんにちは。読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。
今回も前回に引き続き日本への出入国時の過去にあったトラブルについてです。
トラブル例➂
【チェックインシステムの不具合】
米国生まれのドミニカ共和国の選手で米国とドミニカ共和国の二重国籍を持っている選手が帰国のために羽田空港でチェックイン手続きをしようとしたときのこと。選手は米国のパスポートのみ持参しており、来日のときは一つのパスポートで何も問題はなかったはずが、カウンターの係員からドミニカ共和国に入国するために同国のパスポートが必要だと言われ、搭乗手続きをさせてもらえません。昨年も米国パスポートのみで来日及び帰国をしていたはずが、何故か今回はだめだというのです。ドミニカ共和国の身分証明証は持参していたため、同国の国籍があることと従来一つのパスポートで出入国ができていたことを根気強く説明すると、その後何らかのシステムの不具合が原因だったとわかりました。結局、システムを修正し無事に搭乗手続きを進めることができましたが、もし最初に搭乗手続きを拒否された段階で引き下がっていたら帰国ができていませんでした。通訳者が冷静に状況を判断して、係員とやり取りをすることが求められる事例でした。
トラブル例➃
【コロナ禍の入国】
前回コラムでも書いたように、コロナ禍の出入国は刻一刻と日々状況が変わるなかで混迷を極めました。PCR検査の陰性証明書と予防接種済みの証明書、また予防接種後に2週間以上経過していることや日本国が指定する国( 新型コロナウイルス感染率の高い地域)を経由(乗継)せずに入国すること、など日本入国のための条件が複雑に設定されており、余りに目まぐるしく日々変わっていく状況に問い合わせ窓口も対応しきれていないということが多々ありました。その中で、巨人軍国際部のメンバー一人ひとりが外務省や厚生労働省の情報発信元のウェブサイトを常に注視しながら最新の情報収集に努めていました。とりわけ、2020年のコロナ禍元年と2021年は、日本国としても外国人入国のルールが定まりきっておらず、外国人の入国そのものを禁止する状況にあり、2021年シーズンは外国人選手ゼロとなる恐れもありました。しかし、状況を見定めていくと2020年に日本にいた選手は外国人であっても前年のビザを生かして「再入国」という枠組みで入国できることがわかったのです。おかげで2020年活躍した選手はそのまま入国することができ、チームにとっても大きな戦力となる外国人選手ゼロの状況は避けることができました。これは私だけでなく国際部通訳者メンバーのチームワークと状況把握が行き届いていた結果だと言えるでしょう。
コロナ禍での出入国は混乱が多く、通訳者としてもその対応力や、更には個人だけでなくチーム力も求められるケースだったと思います。通訳者というと、選手と通訳者のように個人対個人の関係が想像されがちですが、様々なトラブルに対処していくためには通訳者間でのチームワークも重要であることを学びました。過去の事例や解決策など知識や経験を共有し蓄積していくことは、職種に限らずやはり大事なことですね。
今回の内容も皆さんの参考になれば幸いです。
それではまた時間お会いしましょう。