COLUMN

2024.12.26

搭乗トラブルの対応(前編)

  • #通訳翻訳コラム
搭乗トラブルの対応(前編)

みなさんこんにちは。読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。

スポーツ通訳者、とりわけ球団に所属する通訳者は通訳以外にも事務的業務も兼ねることは過去のコラムでも書きましたが、外国人選手の来日時や帰国時に何らかの問題が発生した際の対応も含まれます。選手の帰国又は来日時の搭乗に伴うトラブルは日常的に起こりうることで、選手が確実に目的地に到着するまでは完全には気が抜けません。今回は実際にあった過去の例を紹介したいと思います。
 
 
トラブル例➀
【乗継便に乗れなかった】

11月の秋季練習を終えて帰国についた2人のドミニカ共和国出身の選手は、米国ビザが取れなかった関係で、フランス/パリ経由で母国に帰るルートを取っていました。無事に成田空港で出国手続きを済ませてパリ行フライトに搭乗したのを見届けたあとは、通訳の私もシーズンを労う目的でその日の夜は焼肉を食べながらビールを嗜んでいたときです。2人のうちの1人から電話があり何事か尋ねると、パリには無事に到着したものの、事前告知なく乗継ゲートが変更されており搭乗時刻を過ぎてしまったとのこと。直ちに焼肉の箸を止め、球団への状況報告とフライトを手配してくれていた旅行会社に連絡。時刻は日本時間で夜の9時を回っていましたが、幸い旅行会社の担当者と繋がることができ、急遽パリのトランジットホテルを予約、翌日の便を手配してもらうことができました。経費負担や支払いについてなど選手に情報を共有し動きを指示。最終的に選手は翌日の便で無事に帰国できましたが、全て落ち着いた時に23時近くになっており、焼肉を楽しむ時間はありませんでした。
 
 
トラブル例➁
【コロナ禍で搭乗手続きできず】

選手ではなく、その家族に起きた事例ですが、選手とともに沖縄キャンプのホテルにいたときのことです。選手家族が来日する予定となっていた日の夜中2時頃に突然、私のスマホが鳴り始めます。眠かったためにそのまま取らずにいても、鳴り続け何やらただ事ではないと察し電話に出ると、選手の奥さんからでした。話を聞くと幼い子供3人と米国ダラス空港に来たはいいものの、コロナ禍での搭乗手続きに必要な書類が足りずチェックインさせてもらえない、係員と話してほしい、と言うのです。選手の奥さんはスペイン語ですが係員は米国人でしたのでまだ眠っていた脳みそをがんばって起こし英語で事情を係員に確認します。係員の言う書類はどうやら日本の検疫が必須とするものらしいのですが、ネットだけではそのような情報は見当たりません。選手の奥さんも動揺して泣いてしまっており、搭乗時間も迫って緊急を要しますが、夜中の時間帯で問い合わせ可能な窓口もなかなか見つけることができません。しばらくしてようやく成田空港の検疫が24時間空いていることがわかり、直接電話して確認しました。すると、米国係員が話している書類は不要でその係員の勘違いだとわかったのです。改めて選手奥さんにはスペイン語で、係員には英語で状況を伝えました。しかし、時は既に遅しで、結局その日は搭乗時間を過ぎてしまい来日日の変更せざるをえない結果となってしまいました。子ども3人ととんぼ返りとなってしまった選手の奥さんにはとても気の毒でしたが、米国係員の認識間違いであったため、フライト再手配などは全て航空会社の負担となり後日無事に来日することができました。全てやり取りが終わった頃には日が昇りはじめていました。
 
 
選手の来日又は帰国時の搭乗手続きの際は何かとトラブルがつきものです。パスポートなど忘れものがないようにリマインドすることは当然ですが、何か発生したときに対処できるように、目的地の空港に無事着くまでは通訳者としても気が抜けません。特にケース➁のときのようにコロナ禍のときは入国に際しての情報が目まぐるしく変更、更新されては最新の正しい情報を把握することが本当に容易ではありませんでした。通訳者として情報収集能力や遠隔から選手をリードできる臨機応変な対応力も必要だと痛感したことは記憶に新しいですね。次回も引き続きトラブル例をいくつか紹介する予定です。
 
 
今日のコラムの内容も皆さんの参考になれば幸いです。
それではまた次回お会いしましょう。

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