COLUMN

2024.09.18

同時通訳と逐次通訳の違いを解説します

  • #通訳翻訳コラム
同時通訳と逐次通訳の違いを解説します

通訳には「同時通訳」と「逐次通訳」がある

通訳は、異なる言語を話す人々の間で円滑なコミュニケーションを促進するために不可欠な役割を果たします。その中でも、通訳方法には大きく分けて「同時通訳」と「逐次通訳」の二種類があります。
このページではそれらの違いについて解説しながら、それぞれの通訳手法が使われるシーンや通訳の難しさなどを紹介していきます。是非最後までご覧ください!

同時通訳とは?

同時通訳は、通訳者が話者の発言をほぼリアルタイムで別の言語に翻訳する方法であり、通常は専用の機器やブースを用いて行われます。この方法は国際会議や大型イベントなど、時間の制約が厳しい場面でよく利用されます。

逐次通訳とは?

逐次通訳は話者が一定の区切りで話を止め、その後に通訳者が翻訳を行う方法です。
この方法は、ビジネスミーティングや法廷、医療現場など、正確さが重視される場面で多く採用されます。
逐次通訳の特徴として、話者と通訳者が交互に発言することで、翻訳内容がより正確で詳細になる一方、全体の進行時間が長くなる傾向があります。

それぞれの違い

つまり同時通訳はリアルタイム、逐次通訳は一定の発言ごと(逐次)の通訳ということになります。
同時通訳のほうが難易度が高い傾向にありますが、それぞれに異なる特性と利点を持ち、状況や目的に応じて適切な選択が求められます。通訳者は、これらの方法を使い分けることで、多様なコミュニケーションニーズに応えることができます。どちらの方法が最適かは、具体的な状況や要件に基づいて判断されるべきです。

他にもある通訳方法? ウィスパリングについて

通訳には同時通訳や逐次通訳以外にも、ウィスパリングという方法があります。
通訳や翻訳業界以外の方には耳慣れない言葉だと思います。ウィスパリングは「耳打ち通訳」とも呼ばれ、通訳者がクライアントの耳元で文字通りささやくように静かに通訳を行う形式です。
この方法は主に少人数の会議やプライベートな場面で利用されます。例えば、ビジネスミーティングや法廷での証言、VIP訪問などのシチュエーションでよく見られます。ウィスパリングの大きな特徴は、その即時性とプライバシーの保護です。逐次通訳のように話者が話し終わるのを待つ必要がなく、同時通訳のように専用の機器を使用することもありません。

ウィスパリングのメリットとしては、通訳が即座に行われるため、会話の流れが途切れにくく、自然なコミュニケーションが維持される点が挙げられます。また、機器を使わないため、準備や設置の手間が省けコストも比較的抑えられます。

一方で、ウィスパリングにはいくつかのデメリットも存在します。まず、通訳対象者が1名ないし2名に限られること、騒音が多い環境では難しいこと、さらに、長時間にわたる通訳では、通訳者の声が疲れやすくなるため、持続的なパフォーマンスが難しく、通訳を聞く側にとっても同じ姿勢を維持しなければならないため、適していません。

ウィスパリングはその特異性から特定の場面では非常に有効ですが、すべてのシチュエーションに万能ではありません。通訳方法を選ぶ際には、イベントの規模、形式、通訳対象者のニーズなどを考慮し、最適な方法を選ぶことが重要です。

同時通訳・逐次通訳が使われるシーン

同時通訳と逐次通訳は、それぞれの特性上、異なるシーンで利用されることが多いといえます。
それぞれどのようなシーンで利用されるかご紹介いたします。

同時通訳が選択されるシーン

同時通訳は、リアルタイムで翻訳が必要な場面で最もよく使われます。
そのため例えば、国際会議やシンポジウム、プレスカンファレンス、セミナー、ワークショップ、株主総会、ビジネスミーティングなど、多くの参加者が集まる場面で役立ちます。これにより、参加者全員が同時に情報を受け取ることができ、会議の進行がスムーズに行われます。
また、みなさんもご覧になったことがあると思いますがテレビやラジオのライブ放送でのインタビューやニュース報道にも同時通訳が用いられることがよくあります。

逐次通訳が選択されるシーン

一方、逐次通訳は、スピーカーが一段落話した後に通訳者が翻訳を行う形式です。
話者が話したあとに通訳する「間」があるので、通訳者はより正確で詳細な翻訳を提供することができます。逐次通訳は、ビジネス交渉や法律関連の会議、インタビュー、セミナー、トレーニングなど比較的小規模な会議でよく使われます。特に、法律や技術的な詳細が重要な場面では、逐次通訳が適しています。スピーカーの話を一旦止めて翻訳を行うため、情報の正確性が求められるシーンにおいて非常に有効です。

同時と逐次、どちらを選ぶ?

同時通訳は、スピードと効率を重視する場面で選択されるのに対し、逐次通訳は正確性と詳細な理解が求められる場面で選ばれます。これらの通訳方法は、それぞれの特性に応じて最適なシーンで使用されるため、通訳が必要なイベントや会議の目的と内容に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。

どちらの難易度が高い?

まず、同時通訳者は話者の話を聞きながらほぼリアルタイムで別の言語に変換しなければならないため、並外れた集中力と瞬発力が求められます。一方で逐次通訳は話者が話し終えるまで待つため、記憶力と表現力が非常に重要になります。同時通訳と逐次通訳では求められるスキルが異なり、一般的には同時通訳のほうが難しいといわれていますが、どちらともいえません。

専門的な分野を学ぶ姿勢も大切

通訳者は専門的な知識や用語に精通している必要があります。
すべての分野に精通している通訳者は少ないですが、基本的な知識を持ち合わせていながら、専門領域についての知識は仕事の依頼があるごとに学ぶという姿勢が重要です。
通訳は国際会議やビジネス交渉、医療分野など、特定の専門知識が求められる場面が多い職種です。クライアントから事前に資料を提供されるケースもありますが、実際は丁寧にレクチャーを受けるケースは少ないと思っていたほうが良いかもしれません。
少ない資料でも、できるだけ綿密に事前準備をおこなうことが必要です。

言葉のニュアンスを汲み取ることも大切

また、話者の言葉遣いやニュアンスを正確に捉え、適切な言葉で伝える能力も重要です。
みなさんも好きなジャンルの話だとニュアンスも含めて正確な情報を汲み取りたいと思ったことはないでしょうか。例えばMLBの大谷翔平さんは連日活躍していますが、大谷翔平さんのインタビュー内容は広く世界に配信されます。テレビやSNS等を通してその内容に触れる方も多いと思いますが、「インタビューの内容をこう訳すのか」「大谷翔平選手の回答をこうやって訳すのか」などと訳し方にも注目されます。
誤解や情報の歪曲を防ぎ、正確なコミュニケーションをとることが求められます。

通訳のプレッシャー

通訳は心理的なプレッシャーが非常に大きい仕事です。
会議やイベントでの通訳は、ミスが許されず、常に高いパフォーマンスを維持する必要があります。このような状況下で冷静さを保ち、正確な通訳を提供するためには、豊富な経験と強い精神力が必要です。
また同時通訳の現場では概ね15分ごとに通訳者が交代し、複数の通訳者で交代制を取ることが普通です。
日本語→日本語でさえ話者が話したことを次々にまとめながら他の人に同時に伝え続けるというのは難しいと思います。話者は切れ目なく話をしていきます。その話の要点を考えながら他の言語で切れ目なく伝え続ける。これは本当に難しく、大変なプレッシャーがかかる仕事です。

日本の国際会議やイベントで通訳されることが多い言語

会議やイベントで通訳されることが多い言語は、英語・中国語・韓国語です。
英語は世界中で最も広く使用されている言語であり、ビジネス、学術、政治など多岐にわたる分野で通訳が必要とされています。英語は多くの国際会議やイベントで公式言語として使用されるため、通訳者の需要が非常に高いです。
英語は多くの国で理解できる人が多い言語ですので、国際会議に参加される方はある程度理解できることが多く、母国語ではないかたも英語を選択して聞かれる方が多いといえます。
次に、中国語(特に標準中国語、いわゆる普通話)は、経済大国である中国の影響力が増すにつれて、国際的な会議やビジネスイベントで頻繁に通訳が求められる言語となっています。中国語通訳者は、中国企業との取引や中国市場に関する情報交換の際に欠かせない存在です。
韓国語も日本語隣国であり経済大国ですので、通訳の依頼を頻繁に受ける言語です。
このように、英語・中国語・韓国語は、日本で開催される国際的なビジネスや政治、学術交流の現場で不可欠な存在となっています。各言語に対応できる通訳者の質と数が、その会議やイベントの成功に大きく寄与するのです。

まとめ:同時通訳と逐次通訳の違い

以上、同時通訳と逐次通訳の違いを解説しながら、同時通訳や逐次通訳のメリット・デメリット、同時通訳の難しさなどを説明してきました。

どちらの通訳方法を選ぶかは、具体的な状況やニーズに応じて決まります。時間効率を重視するなら同時通訳、正確さを重視するなら逐次通訳が適しています。また、通訳者のスキルや経験も選択の重要な要素となります。通訳者としてのキャリアを考える際には、どちらの方法にも対応できるスキルを磨くことが重要です。

この記事を通じて、同時通訳と逐次通訳の基本的な違いと、それぞれのメリット・デメリットについて理解いただけたでしょうか。どちらの通訳方法も、それぞれの特性を理解した上で適切に選択することが、成功するコミュニケーションの鍵となります。

ご依頼はコチラ 登録スタッフ募集