小さなお子さんを育てながら、北京語・韓国語の通訳・翻訳者として活躍する福山阿英(ふくやま・あい)さんにお話を伺いました。
お仕事の典型的な一日の流れを教えてください
電車の中で、当日用に作った単語帳をスマートフォンで見ながら移動します。
現場に着いたら、会議関係者やパートナーのみなさんと会話する時間を持つようにしています。そうすることによって会場の雰囲気が和み、緊張を緩和する効果もあるので、パフォーマンスにもいい気がします。
会議が始まると、自分のパートの時は集中力を100パーセントまで高めて訳し、待機中はパートナーのサポートをしながら自分のパートの準備をします。私の場合はまだまだ経験が浅いので、休憩中もなかなか気持ちに余裕が持てず、資料を読んでいたほうが落ち着きます。会議が終わるまでは時間が過ぎるのがとても早く感じます。終了後は先輩方とお茶でもしたいところですが、子どもが待っていると思うと、一刻も早く飛んで帰りたいです。みなさんも、「(子どもが)待っているから早く帰ってください!」と声をかけてくださるのですが、それを聞くといつも心が温まります。
今のお仕事に決めた理由を教えてください
ずっと同じ環境で、限られた人、限られたことにしか触れられない仕事には就きたくない!と思っていたので、その正反対な通訳の仕事はとても魅力的でした。
お仕事にやりがいを感じるのはどのような時ですか?
嬉しかったエピソードとしては、仕事が終わった後、「本日スムーズに進行できたのでは福山さんのおかげです」との言葉をいただけると役に立ててよかったと思います。特にセミナーでの通訳が終わった後、「本当に分かりやすくて助かりました」と受講者の方からの御礼の言葉をいただけると、発表者の方から言われるよりも嬉しいです。
自分の成長を実感したエピソードがあれば教えてください
一つ一つの仕事を通して成長を実感しています!それぐらい足りないところが多すぎるからだと思います。こう訳せばよかった、こう伝えればよかったと思うところは毎回あります。そのような気づきは次の現場に活かせるので、失敗ではなく、成長だと思うようにしています。通訳者としての能力だけはありません。一人の人間としても通訳の現場で多くの刺激を受けています。通訳者でなかったら、接触する機会がなかったはずの人物の話を聞くことができ、通訳者でなかったら、まったく興味がなかったはずの業界に触れながら、視野が広がり、思考も自由になっていく気がします。
今のお仕事で大切にしているポイントはなんですか?
少しでも多くの情報を集めて、会議内容の背景について理解するようにしたいと思っています。会議の中で、その分野について一番の素人は通訳者ですので、字面だけ訳して、棒読みに聞こえたり、自信がなさそうに聞こえてしまうことがあります。そうなるとせっかく話し手が素晴らしいスピーチをしても、聴衆の聞きたいと思う気持ちを引き出せないかもしれません。専門家の通訳をするときは、自分もプチ専門家、或いは専門家の助手になったつもりで、聞き手に訴えかけたいのですが、背景知識がないとなかなかそこまで堂々とした姿を見せることができません。事前に調べた情報をベースに、話し手の発言の意図を汲み取るように努めています。
お仕事の大変なところがあれば教えてください
小さい子どもがいるので、会議資料の準備は子どもを寝かせてからしています。資料が直前まで入手できなかった場合や、現場に出る日が続いていて直前まで資料を読めなかった場合は、徹夜で準備しないといけないのが今の私には大変なことです。
どのような人が向いている仕事だと思いますか?
通訳の仕事にもさまざまなタイプがありますので、自分に合った通訳形態を選んで努力をすれば、向き不向きはないかもしれません。ただ、自分も含めて周りの仲間を見ると、好奇心旺盛で勉強するのが好き、言葉の表現を磨くのが好き、自分の経験を惜しみなく人に伝えるのが好きな人が多い気がします。
吉香の魅力を教えてください
ドライな関係ではなく、一人ひとりの通訳者としっかりコミュニケーションを取り、心を通わせているのが感じられるところです。
コーディネーターに感謝したエピソードがあれば教えてください
教育関係の仕事をご紹介いただいた際に、「小さいお子さんがいる福山さんにピッタリだと思ってぜひお願いしたいと思いました」とおっしゃっていただき、とても感動しました。
仕事終わりやオフタイムの過ごし方を教えてください
多くの時間は子どもと思いっきり遊ぶのに使っていますが、自分の時間があるときは、通訳でまだ経験したことがないけれど、即戦力になりたいと思う分野の関連書籍を読むのが一番の楽しみです。
お仕事で今後の目標があれば教えてください
3人体制で同時通訳をしていた時のことですが、予定されていなかった発表が追加され、突然分厚い資料を渡されたことがあります。その時ベテランの先輩が「これは私がやります」と申し出て、見事にこなしていました。自分も早くそのような頼れる存在になりたいと思っています。
吉香で働こうか迷っている人へメッセージをお願いします
組織の一員もいいけど、“ファミリー”の一員ならもっといい、と思っているならぜひ!