北京語通訳者として30年以上のキャリアを誇る大森喜久恵(おおもり・きくえ)さんにお話を伺いました。
仕事の典型的な一日の流れを教えてください
会議通訳の仕事は時間も場所も案件によってまちまちです。中国への出張は皆さんが思うほど多くはありません。むしろ国内出張が多いです。最近は中国語圏以外の国に出張する機会も若干あります。 会議通訳のほか、放送通訳にも従事していますが、私が担当するテレビ局での放送通訳は、早朝か夜かのどちらかです。早朝シフトは4時起き、遅番シフトからの帰宅は「午前様」です。
現在の仕事に就いてどのくらいの期間ですか
同時通訳の初仕事は1989年です。逐次通訳はその前から従事しています。先輩通訳者の背中を見ながら無我夢中で続けてきたつもりですが、知らず知らずのうちに「古株」の部類になってしまったようです。
仕事にやりがいを感じるのはどのような時ですか?
通訳の仕事を始めたばかりの頃に通訳したりお世話になったりした方々と通訳現場で再びお会いし、こちらのことをよく覚えてくださっていたときは、懐かしくも嬉しくあります。
自分の成長を実感したエピソードがあれば教えてください
事前勉強しながら「よもや本番中に潰れてしまうのではないか」という不安にさいなまれることも正直ありますが、そのような手ごわく難しい内容のお仕事を何とか無事に終えることができたときは、少しは成長できたかなと感じます。
仕事の大変なところがあれば教えてください
通訳のための勉強はまさにエンドレスです。通訳案件が目の前に迫っていれば、そのための勉強に追われ、「受験勉強」にも似た「臨戦モード」になります。通訳案件の予定の入っていないときであっても、「ことばを磨こう」、「時事問題をチェックしておこう」と、やることに際限はありません。また、通訳パフォーマンスをスポーツに例えるとして、「芸術点」、「技術点」ともに「満点」と思えることはそうそうありません。常々「こう訳せばよかった、もっとああすればよかった」という気持ちが残ります。ただ、そのような気持ちがあるからこそ、「次も頑張ろう」と思うことがき、ここまで通訳の仕事を続けて来たのではないかとも思います。
どのような人が向いている仕事だと思いますか
正直のところ、よほどちゃらんぽらんな人間でなければ、「こういう人が向いている」ということはあまりないようにも思います。通訳者にもいろいろなタイプの人がいますから。強いて言えば、やるべきことに地道に向き合う心構えのある人でしょうか。また、現場では通訳技能の良し悪しが問われることはもちろんですが、話し手や聞き手に思いを致しながら仕事ができるかや、周りの人たちとの協調性がとれるかなども大切だと思います。人間性や協調性は何も通訳業に限ったことではないでしょうが、我々の仕事にも欠くことのできない要素です。特に通訳ブースという狭い空間で協働するにあたり、独りよがりであったり、同僚への配慮が欠けていたりするのは考えものです。
今の仕事で大切にしているポイントはなんですか
「訳す」というより「伝える」こと。そして中国語でいうなら「精益求精」。事前準備にかけられる時間に限りはありますが、案件ごとに丁寧な仕事を心がけたいと思います。
吉香に感じるイメージを教えてください
色々なことを率直に相談しやすい雰囲気です。テレビ局関係の仕事に強い会社という印象がありますが、私は、どちらかというと大学のシンポジウムなどの同時通訳案件でお世話になることが多いです。若手の通訳者にも機会を与え、育てようという思いのあるエージェントだと感じています。
仕事終わりやオフタイムの過ごし方を教えてください
これまでは仕事が終われば即帰宅、家事や育児でほぼ手一杯の日々でしたが、最近は趣味と実益を兼ねて英語の勉強を続けています。会議通訳レベルには程遠いですが、リレー通訳のお仕事や英文資料しか頂けない案件の事前準備に、それなりに役立っています。
仕事で今後の目標があれば教えてください
これからも、ひとつひとつのお仕事を大切にしていきたいと思います。また、何らかの形で若い世代の方たちにこれまで経験してきたことをお伝えできれば幸いですし、若手通訳者の方たちからも刺激を頂ければ嬉しいです。
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