北京語通訳・翻訳者として第一線で活躍する、櫨博信(はじ・ひろのぶ)さんに伺いました。
今のお仕事に就いた経緯を教えてください
大学卒業後は国内大手自動車メーカーに9年間勤務し、生産管理、渉外広報、中国事業などを担当しました。その後は塗料メーカーで北京営業所の所長も務めさせていただきました。その後、ある程度自分の実力に自信がついたことから、フリーランスの通訳者・翻訳者となりました。前職では通訳サービスを利用する側にいましたので、クライアント様が通訳者にどのようなことを望み、どのような通訳者は望ましくないかを理解している点が今の私の強みになっていると思います。
お仕事にやりがいを感じるのはどのような時ですか?
通訳を担当した会議・会合がうまくいって、日本側と中国側の出席者たちが仲良くなる姿を見るのが一番嬉しいです。また、ある有名な方に「きみ、通訳うまいね」とおっしゃっていただき握手を求められたこと、中国側のトップから「中国での会合でも今日の通訳を使いたい」とおっしゃっていただき中国に呼んでいただいたこと、ある企業の現地社員の昇格面接で自己PRを一所懸命に訳した結果、ご本人が大変嬉しそうな表情をして両手で握手してくれて、出口まで見送ってくれたことなど、通訳をしていると本当に嬉しいエピソードに多く出会います。本当に幸せな仕事をさせていただいていると日々感謝しています。
自分の成長を実感したエピソードがあれば教えてください
最近はどんな状況でも慌てずに対処できるようになってきたことが自分の成長かと実感しています。例えばもともと別の通訳者が担当する予定だった案件で、その通訳者が体調を崩したため当日の朝に急きょアサインされてピンチヒッターとして案件を担当することになり、電車の中で資料を見ながら短時間で準備をしただけにもかかわらず「完璧な通訳でした」とクライアント様からフィードバックを頂戴した時には、改めて成長を実感しました。最終的には英語のレベルを上げて、「日中英」の通訳・翻訳に対応できるようになるのが目標です。
吉香に感じるイメージを教えてください
吉香を知ったのは、先輩通訳者からの紹介です。第一印象は、議員会館にオフィスがあるなんてすごいなと思いました。政治関係の案件が強いのはもちろんですが、テレビ局からの信頼が厚くテレビ関係の仕事にとても強いと思います。スタッフの皆さんはフットワークがものすごく良く、いつもニコニコしている人が多いという印象です。特にこれといった経験のない時代から自分のことを評価してくださり、チャンスも与えてくださったのでしっかり恩返ししたいと思っています。また、良い時も悪い時もしっかりフィードバックをくださるので、次回もっと良い仕事をしようというモチベーションになります。あまり良くないと自分で思った時も「大丈夫」と励ましてくださるので、次はもっと良いパフォーマンスを出そうという気になります。吉香の魅力はいろいろありますが、最終的にその魅力を作り出す源は、温かみを持った人たちではないかと思います。
どのような人が向いている仕事だと思いますか
毎日が勉強の繰り返しなので勉強好きな人に向いている仕事だと思います。また、人の話を正確に理解することが求められる仕事なので固定観念や先入観を持たずに人の話によく耳を傾け、裏方の仕事でもあるのであまり出しゃばらない人かと思います。
仕事終わりやオフタイムの過ごし方を教えてください
フリーランスとしては何よりも健康が第一なので、ジムで体を鍛えたりストレッチをしたり、家でよく寝たりしています。今の目標は市民マラソンを走ることです。そのほかスポーツは過去にラグビーを16年やっていたので、今もテレビでラグビーの試合を見るのは好きです。年をとったら翻訳をしながら自然が多く景色の良い場所でカフェの寡黙なマスターとして晩年を送るのが夢なので、家でコーヒーを入れる練習もしています。
これから通訳・翻訳のプロフェッショナルを目指す方へ、メッセージをお願いします
私もフリーランスになった当初は本当に仕事が安定して入ってくるのか、自分の実力で通用するのかどうか不安はありました。でも、不安に思う暇があったら少しでも勉強して実力をつけようと思いました。人生は取捨選択の連続ですが、人の意見で選択を決めると失敗した時にその人のせいにしてしまうので、自分の場合は人の助言はいろいろ聞きますが、最終的には必ず自分の意志で選択し、自分の選択には自分で責任を取るように心がけています。