今年の夏、4年に一度の夏の一大スポーツイベントが東京で開催され、その英語スタッフとしてご参加いただいた田村有咲(たむら ありさ)さんにお話を伺いました。
今回田村さんにはビッグスポーツイベントのリモート記者会見で英語スタッフとしてご参加いただきました まずは今回参加しての率直な感想を教えてください
英語という自分が日々学んでいる大好きな分野でここまで大規模なイベントに携わることができたのは非常に貴重な経験でした。業務に関しては始まるまで仕事の内容がほとんど分からず、オンラインではいってくる質問を翻訳するという程度しか聞けていなかったので、もっと一人で黙々と作業する仕事だと思っていましたが、実際は英語を活用する場面も多く、会場のリーダーさんやベニューマネージャーさんをはじめたくさんのスタッフと協力しながら作りあげる記者会見だったのでコロナ禍で人と接する機会がなくなっていた中、久しぶりに人と触れ合い和気あいあいと楽しく働くことができました。
今回の仕事の募集を知ったきっかけを教えてください
現在通っている大学院の通訳の授業でお世話になっている先生が吉香の通訳者でもあったのでその方を通してご紹介頂きました。自分の好きな英語を使ってこんな大きなイベントに携われる機会は二度とないのではないかと思い、迷わず挑戦することに決めました。コロナ禍で海外の方と英語でコミュニケーションをとる機会が減ってしまっていた中でもあったので、こんな素敵な仕事をいただけて本当に感謝しています。
全43会場の中でいくつかの競技会場にはいっていただきましたが、今回の具体的な業務内容を教えてください
大きく分けると主に二つの役割があり、ひとつは各国のメディア向けにオンラインで生配信されるメダリストの記者会見中の記者からの質問の翻訳、もうひとつは会場の外国人マネージャーと日本人スタッフ間の英語のコミュニケーションのお手伝いでした。前者に関しては今回コロナ禍での開催ということで競技後に行われる記者会見は全てオンラインで生中継され、全世界に配信されていたので、その記者会見をモニターしている世界中の記者からチャットで入ってくる英語の質問を翻訳し会見場の司会者へ共有するという役割でした。司会者はそれを読み上げ会見が進んでいくという仕組みになっていました。
コロナ禍ならではのオンラインという形式で少し特殊な業務内容でしたね
はい。慣れないオンラインシステムに戸惑いつつも事前に資料を読み込み、できる準備を整えて臨んだので、基本的には落ち着いて対応することができましたが、チャットにはいってくる質問に所属と氏名を入れるルールを忘れてしまう方の質問に戸惑ったり、質問の選定基準があるのですが、微妙な内容や少しセンシティブな質問だった際は判断に迷い作業に時間がかかってしまうといった焦りもありました。そんなことがあってもなんとか上手く乗り切ることが出来たのは、とにかくどの会場のリーダーさんも皆いい方で、程よい緊張感の中で刺激を受けつつ、仕事がしやすい環境を整えていただけたからだと思っています。
今回の仕事を通してやりがいに感じたことはどんなことでしたか?
楽しかった思い出はたくさんありますが一番はコロナ禍でここ数年、海外の方と接する機会が極端に減ってしまっていたので、久しぶりに国境を越えた交流ができたということです。ある会場のベニューマネージャーさんが「日本はとても良い国だ。これが終わってもまた絶対日本に来る!」と言ってくれて本当に嬉しかったです。海外の文化ならではの冗談を交えて話してくれる外国の方と談笑したりもして、閉ざされた日々に少し明るさを感じることができました。
また記者会見は1日に何度もありましたが自分のシフトに金メダルの会見がはいった時は気合も入り、やりがいがありました。あとは少し本業から逸れてしまう話ですが、偉い方が会見をするメイン会場でマイクテストを頼まれ、記者会見側の席に座ったことは一生に一度の記念です(笑)
逆に大変だったことはどんなところでしたでしょうか
さすがに大規模な大会の記者会見だったので予定されていた会見が突然なくなったり、逆に突然はいったりとスケジュールが流動的だったのは少し大変でした。前日まで予約はなかったのに朝、突然会見の予約が入り、しかも予定していた朝の集合時間と同じ時間にはいってしまい慌てて会場に行ったらキャンセルに・・・なんて二転三転ということもありました。今までこういった流動的でかつ臨機応変な対応を求められる経験は多くなかったので最初はどう対応したらいいかわからず大変でした。それでもチームのスタッフの方々がしっかりフォローしてくれたので落ち着いて対応することができ楽しんで業務に取り組むことが出来たと思っています。
チームの話もでましたが一緒に仕事をした現場のスタッフはどんな印象でしたか?
現場は4人1チームで動いていましたがリーダーさんをはじめ、どの方も非常に優しく気さくでシステムの使い方も不慣れだった私のことを気にかけてくださり非常に働きやすくのびのびと業務に臨めました。プロ意識をもって仕事をする皆さんの姿からとても刺激を受けました。
最後にこの仕事を通して学んだこと、今後田村さんと同じように英語を生かした仕事をしたいと思っている方にどんなアドバイスがありますか
今回接した会場のベニューマネージャーさんは全員が全員英語を母国語とする方ではありませんでした。ロシア人のベニューマネージャーさんの時はとても大変でとにかく話すスピードが速く、ロシア語の独特の訛りもあって聞きとりにとても苦労しました。それからオンラインシステムや機材に関することを通訳で伝えないといけない場面では用語の知識があまりなかったためかなりかみ砕いた表現しか出来なかったことは自身の通訳としての未熟さを痛感しました。こういったことを経験するともっともっと勉強していかないといけないということを実感します。それでも実際終えてみると本当に良い思い出しか残っていません。アドバイスができるとするとまだ自信がないからと何事もすぐに諦めるのではなくなんでも思い切って挑戦してみることが成長につながるということでしょうか。
コロナ以前は学校で留学生とよく話をして、英語をもっと話せるようになりたいとか海外に行きたいという思いがあったのですが、世界の状況が一変し留学生も皆帰ってしまい、英語を話す機会もなくなり自粛生活の中、勉強のモチベーションがかなり下がってしまっていました。そういった環境で自分の英語力も低下している焦りもありました。そんな中で今回この仕事に挑戦して一時的ではありますがまた国際交流がもてたことや学校ではない実務で得た経験は、自分の今後の目標や勉強のモチベーションにつなげることができ、素晴らしい思い出になりました。貴重な機会をいただき本当にありがとうございました!