COLUMN

2021.02.25

異なる二つの文化を結びつけ、思いを伝えられるのが通訳・翻訳です

  • #登録者の声
異なる二つの文化を結びつけ、思いを伝えられるのが通訳・翻訳です

セルビア語・ボスニア語・クロアチア語・ロシア語・日本語と5つの言語を駆使し幅広い業務で活躍する通訳者・翻訳者の高橋 ブランカ(たかはし・ぶらんか)さんにお話しを伺いました。

高橋さんは吉香へご登録いただいて10年になりますが、現在はテレビ局の翻訳やリサーチなどを中心にご活躍いただいております この仕事を始めようと思ったきっかけは何でしょうか また、この仕事で一番大切にされていること、意識していることはありますか

通訳の仕事を始めようと思ったきっかけは、ドイツ語通訳者だった父の影響で子供の頃から異なる言語を話す人同士を繋ぐ通訳の仕事に憧れをもっていました。そんな父の姿を見て育ったこともあり、違う言語の人とコミュニケーションをもちたい気持ちが昔からあり、セルビアの大学の日本語学科に進学し、そこから通訳としての道をスタートさせました。この仕事で一番大切にしていることは常に日本語力を向上させる努力です。私は日本語ネイティブではないので、今でも日々日本語能力の研鑽に励んでいます。日本人並みにはなれないかもしれませんがカタカナの表記をなるべく使わないようにし、日本語の語彙力の向上と理解しやすい文章の訳出に努めています。

これまで吉香から受けた業務で一番印象深かった仕事、やりがいを感じた仕事は何でしょうか またその理由も教えてください

毎年10月に行われるフィギュアスケートの大会でのテレビ局の同行通訳の仕事がとても印象に残っています。スポーツ大会の現場なので専門性と臨機応変さが問われますが、生き生きとした環境で適度な緊張感をもちながら仕事をすることができました。今までテレビでしか見たことのない各国のスター選手の迫力を間近で感じることもでき、とてもやりがいのある現場でした。

逆に今まで担当した業務で難しかったものや大変だったと感じたものはありますか その理由もお聞かせください

プーチン大統領の記者会見の映像翻訳が今までで一番大変でした。あらかじめ想定されるキーワードや事前にでている情報をリサーチした後に放送本番に向けて会見を訳していくという仕事の流れでしたが、プーチン大統領は予定通りの時間に現れず、記者会見が大幅に遅れました。テレビ局の現場は騒然とし混乱状態となり、放送までの時間も差し迫り、ほぼ同時通訳のような作業となりました。それ以降、現在に至るまで様々な仕事を経験しましたが、今でもこの仕事を超えるものにはまだ出会っていません(笑)

通訳・翻訳の仕事を通して気づいたご自身の強みはなんでしょうか

どんなに緊張する現場でもいざとなると落ち着いて訳すことができる本番に強いタイプだと思っています。これは先ほどお話ししたプーチン大統領の業務の際に気づいた自身の強みでもあります。また、相手が自分の育った文化とどんなに違っていたとしても、考え方を否定せずどんな価値観も受け入れ、尊重できることが強みだとも思っています。通訳者として、言語の違う二つの文化をつなげる者として、尊重できるということはとても大事なことだと考えています。

高橋さんは母国語のセルビア語以外にクロアチア語・ボスニア語・ロシア語・日本語を駆使し様々な現場で活躍されていますが、日本ではマルチリンガルはかなり稀少です 複数言語を習得された経緯やコツなどをお聞かせください

セルビア語、クロアチア語、ボスニア語は元は同じセルビア・クロアチア語で一つの言語です。ロシア語に関しては、たまたま夫の仕事の都合でベラルーシとロシアで生活をする時期があり、そこで猛勉強しました。勉強方法は至ってシンプルで、コツコツ勉強するのみです。聞いて、読んで、喋って、書く、これを毎日欠かさずやることです。週に数回とか時間の合間に少しずつなどでは何年経っても習得することはできません。毎日、継続的に何時間もやることが大切で、これが言語を習得する一番の近道だと思います。おかげで母国語と同じくらいに話せるようになりました。

前の質問と似ていますが日本語を習得されたのはいつ頃でしょうか 経緯含めてお聞かせください 大変でしたか?

日本語はまだまだ習得への旅の途中ですが、学び始めたのは30年ほど前になります。本当に全く知らない言語が学びたかったということもあるのですが、進路を父に相談した際に父から日本人の穏やかな雰囲気や話し方や礼儀正しさなどを聞き、日本ってなんだかいいなと思い、母国セルビアの大学の日本語学科に入学しました。実際に勉強を始めてみると、日本語はとても難しかったです。母国語のセルビア語とは、あまりにも違い、最初はつかみどころが分からず一時期は絶望してやめようとも思いました。でも勉強を続け、文法の仕組みが分かってからは、かなり楽になりました。文法を習得した後は漢字、そして敬語という順で学び今でも勉強を続けています。

日本の一番好きなところ、逆に嫌いなところを教えてください

日本の好きなところは礼儀正しさと他人に対しての遠慮です。それは一番好きなところであると同時に、もどかしいと思う日本人の特徴でもあります。相手に深く干渉し過ぎないのは良い一面である一方で本当にお互いを理解し、相手を深く知るためにはもう少し踏み込んでオープンに話してもいいのではないかなと思います。また、日本語特有の「お疲れさまです」や「どうぞよろしくお願いいたします」など丁重な言葉が逆に相手の個性に踏み込むまでに時間がかかってしまうことに歯痒さを感じてしまうこともあります。

吉香に登録する以前の仕事に関して教えてください フリーランスになる前のこと、フリーランスになるきっかけを教えてください

最初に日本に来た時は好きなファッションの仕事に挑戦したかったのでイタリアの有名ブランドのブティックに就職したこともあります。実際に働いてみると日本型の労働システムが、異なる文化背景で育った自分にはあまり向いていないと分かり、フリーランスになりました。東京国際映画祭に参加した際のボスニア映画の翻訳と監督の通訳は映画の台詞を訳すことにとても苦労した半面、やりがいのある仕事でこれを機に本格的にフリーランスとして通訳・翻訳業に進んでいきました。

テレビの仕事(映像翻訳やリサーチ業務)に興味を持っている方にアドバイスをお願いします どういう人が向いているか、どんなスキルを身につける必要があるかなどこれまでのご経験をもとにお考えを教えてください

 映像翻訳とリサーチ業務は、現場の通訳とは異なり比較的初級でもチャレンジしやすいお仕事だと思います。映像翻訳で一番大切なのは当たり前ですが聞きとり能力です。加えて聞きとりができていたとしても言語は文化と結びついているので適切な訳出をするためにはその国のことや文化の知識を深める勉強をすることもとても大切です。

 テレビ業務含め、今後挑戦してみたいお仕事はございますか?

同時通訳!日本語ネイティブではないので難易度が高いところはあるかもしれませんが、勉強し挑戦したいと思います!

吉香の魅力、また吉香に今後期待することはありますか?

吉香はスタッフがとても温かく、私のような外国人にチャンスを与えてくださったことに感謝しています。皆さんとても丁寧で、献身的にフォローをしてくださいます。吉香の仕事でまず思い浮かぶ言葉は「信頼関係」です。これからもどうぞよろしくお願いします!

 

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