COLUMN

2024.10.17

スポーツ通訳のやりがい

  • #通訳翻訳コラム
スポーツ通訳のやりがい

みなさんこんにちは、読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。

私はプロ野球通訳という立場ですが、通訳という仕事には様々あり、会議通訳、ビジネス通訳、放送通訳、観光ガイドを兼ねる通訳案内士など、ニーズによって種類は多様で求められる技量や知識はもちろん、業務の目標ややりがいもそれぞれ異なります。スポーツ通訳についてはこれまでのコラムを通して、業務内容や必要なスキルについて紹介してきましたが、この回ではとりわけスポーツ通訳ならではのやりがい、について書きたいと思います。
 
 
■待ち望んだ歓喜の瞬間

10月2日で読売巨人軍はプロ野球レギュラーシーズンの日程を全て終え、4年ぶりの優勝奪還を目標に望んだ2024年をセントラルリーグ優勝という最高の結果で終えることができました。あとアウト一つで優勝が決まる緊張の瞬間は、私も選手とともにベンチで戦況を見守り、優勝の歓喜を選手やスタッフらとともに分かち合うことができました。通訳者として選手のサポートを誓い、苦楽をともにしながら戦い抜いたシーズン、勝利の瞬間は自然と目に涙が溢れていました。プロ野球球団の中には選手以外にも、トレーナーの方やデータ分析の方などたくさんのプロフェッショナルなスタッフが在籍し、選手含め全員が一丸となって「優勝」という目標に向かって突き進みます。通訳者は外国人選手のために雇われるわけではありますが、目標を共有するチームの一員でもあるのです。だからこそ、チームの目標が達成された瞬間は何にも代えがたい特別で至福な、そしてプロ野球通訳をやっていてよかったと、心から思える瞬間でもありました。
 
 
■恒例のビールかけにも参加

プロ野球に詳しい方はご存知のとおり、優勝を決めた日、選手と現場付きのスタッフはビールかけにて勝利のお祝いをします。今年は遠征先の試合で優勝が決まったため、滞在先のホテルにてビールかけが実施されました。用意された瓶ビールは3000本以上。互いに労を労いながらあっという間に3000本のビールがなくなるのは圧巻の一言です。余談ですが、ビールは飲まなくても浴びるだけでまるで何杯も飲んだかのように酔っ払うんですね。酒を浴びるようにして飲むとはまさにこのこと。このような唯一無二の経験ができるのも、スポーツ通訳、とりわけプロ野球通訳者だからこその醍醐味です。
 
 
■チームの一員としての通訳者

冒頭でも述べたように、通訳者の業務形態は様々で、会議のときだけ或いはイベント期間のみなど短期契約も珍しくありません。そのような場合はなかなか依頼者や顧客と深い人間関係を築くに至ることは難しいと思いますが、一方で、私のようなチーム付きのスポーツ通訳者は外国人選手はもちろん、チーム関係者と一年間という長い時間を共にするのが特徴です。選手とスタッフが優勝という一つの目標に向かって四苦八苦する時間が長ければ長いほどチーム内の絆は深まり、通訳者もその一人として勝利の喜びが大きなやりがいとなります。外国人選手のサポートがメイン業務ではありますが、私達通訳も外国人選手もチームの勝利という共通の目標を通じて、まさに「同じ釜の飯を食った仲」の関係をチームの一員として築けることは、スポーツ通訳者特有のやりがいとも言えるでしょう。
 
 
スポーツ通訳者にとって通訳業務の成果ももちろん大事ではありますが、それと同様に、又はそれ以上にチームの勝利はやりがいを感じさせてくれる大きな要素でもあります。当然ながら、勝つチームがあれば負けるチームもあり、敗戦したときや担当選手が活躍できなかった時のショックも大きいですが、その反対に選手がいい結果を出してチームが勝利を飾った日の帰り道ほど、充実感とやりがいに満たされる時はありません。改めて、優勝の喜びを経験させてくれた選手には感謝ですね。

読売巨人軍については、セントラルリーグは優勝しましたが、これから日本シリーズ出場をかけたクライマックスシリーズ、そして最後の日本シリーズとまだ試合は続きます。もう一度歓喜の瞬間が味わえるように、引き続き選手のサポートを通じてチームの勝利に貢献できるよう通訳者としての業務に励んで行きたいと思います。

今日のコラムもみなさんの参考になれば幸いです。
それではまたお会いしましょう。

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