みなさんこんにちは、読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。
スポーツ通訳者の業務はその名の通り通訳(言語変換)に関することがメインですが、一方、一般の会社員の方々と同じくメールやパソコンを使ったり、通訳以外の業務も行います。過去には「スポーツ通訳者になるのに必要な資格は?」のコラムで「スポーツマネジメント通訳検定」について紹介しましたが、まさしくマネジメント的業務を担うのがチーム付きのスポーツ通訳者になります。
■用具の発注
担当する外国人選手が試合や練習で必要とする野球道具やウェア類を発注することも通訳者の仕事です。道具の種類や選手によって必要とするメーカーの担当者とやり取りをし、選手の要望に合ったアイテムを手配します。口頭や電話でのやり取りだけで済む場合とメールや発注フォーマットを要する場合とやり方は球団によってそれぞれ違うことが予想されますが、読売巨人軍では発注書をエクセルで作成し、アイテムや金額などの発注履歴が残るようにしています。メーカー担当者の方への連絡はメールを使用しますので、基本的なパソコンスキルやメールの書き方など、ビジネスマナーを備えておくことも大切です。
◯事務的業務
■選手来日前後の行政手続き
外国人選手が来日し日本で暮らし始める前には様々な手続き、ステップを踏む必要があります。来日前は、COEと呼ばれる在留資格認定証明書の申請書を入国管理局に提出し、入国前の外国人選手に日本入国に必要な査証(ビザ)が行き渡るように手配します。また、来日後は管轄の役所に赴き、住民登録手続きなどの役所手続きも済ませます。読売巨人軍では通訳者と球団事務所スタッフと協力をしながら、選手に代わってそれぞれ手続きを代行します。プロ野球通訳者を目指される方は、ビザ関係の知識があると業務に役立つだけでなく、採用でもアピールポイントになると思いますので事前に知っておくといいかもしれません。
◯日本居住に必要な手続き
■病院や学校の手配も
その他、球場外の私生活でも外国人選手から様々な要望を受けることがあります。選手や選手の家族が体調不良を起こしてしまった場合には、選手の自宅近くで外国語ができる病院を探したり、過去には選手の妻が日本で出産をしたいと決めたときには、外国人対応可の妊婦クリニックと病院を探した上で検査や入院に必要な手続きを私が代行し、都度必要な通訳をしたこともありました。また、小さい子どもを持つ選手の場合、子どものためのインターナショナルスクールを紹介することもあります。さらに、稀なケースではありますが、過去ある選手の妻が美容と健康にとても熱心で、コロンハイドロセラピー(腸内洗浄)ができるところを探してほしいと要望がありました。クリニックを見つけるのも大変でしたが、施術当日に電話越しに通訳することもまた大変だったのを覚えています。
◯よくある私生活の要望
上記例に見られるように、プロ野球通訳者には言葉を使って仕事をする傍ら、選手がグラウンドで力を発揮できるように、球場内外を含めてのサポートが求められます。もし自分が外国に住むことになったら、何が必要になるだろうか?何に困るだろうか?こういう視点になって生活をしてみると、外国人選手から要望があったときに、或いは選手が困る前に前もって、素早く問題や要望に対処できるようになります。日本にずっと生活をしていると、私も忘れがちですが、外国の方の視点に立って業務に当たっていく重要さについてコラムを書きながら改めて認識しました。
今日のコラムもみなさんの参考になれば幸いです。
それではまたお会いしましょう。